本日も、株式投資のアドバイスをうたうLINEグループに関する注意喚起です。
以前、朝倉慶氏の名を語るフェイク広告から誘導される株式投資コミュニティについてまとめましたが、今回も同じような案件です。
広告やフェイクニュースから誘導されるLINEグループ
管理人は、検証目的で複数の類似したLINEコミュニティに参加していますが、その多くはフェイク広告をきっかけに誘導される形式です。
また、株取引をうたうLINEグループに参加していると、しばしば同様の別LINEグループへと案内されるケースもよくあります。
今回取り上げるLINEグループの名称は「Glenview日本株◯◯◯」という形式で、末尾の◯◯◯にはアルファベットや数字の組み合わせが入っています。
このことから、「Glenview日本株」というLINEグループが複数存在しており、グループごとにIDを割り振って運用・管理されている可能性が高いと考えられます。
グループ内では、先生役として「中村拓哉」と名乗る人物が登場し、株式投資に関するレクチャーが日々投稿されています。
それに対して、サクラと思われる複数のアカウントが反応を示し、あたかも活発なコミュニティであるかのような雰囲気が演出されています。
さらに、アシスタント役の女性も登場し、「AIを使った投資」「ヘッジファンド体験口座」への勧誘を担当するなど、巧妙に株式投資への参加を促す仕組みが整えられています。
LINEグループをを利用したこの手の勧誘手口は以前から存在していますが、最近では手法がより巧妙になってきています。
演出のリアルさや登場人物の作り込み、誘導の流れなどが巧妙に構成されており、情報に疎い方や投資初心者の方であれば、信じ込んでしまう可能性も十分にあるでしょう。
LINEグループではAI投資(株取引)の報告が行われる
LINEグループ内では、AI投資の参加者向けに本日購入する銘柄(銘柄情報は伏せた状態)の指示が出されます。
午後に売却の指示が出されると、サクラと思われるアカウントが、取引画面のキャプチャなどを投稿して、「利益が出た」という報告を行います。

上記画像は、コミュニティに投稿された取引画面のキャプチャですが、明らかにおかしい点があります。
まず、一番上に表示されている「総損益」の「総」という漢字に注目してください。
この文字の左側(糸へん)が、中国語(繁体字)で使われる字体になっていて、日本語表記とは異なっています。
さらに内容を見ていくと、
720円で買った株が793円に上昇
300株保有しているので、利益は +21,900円と表示されています。
しかしその下にある「時価総額」が、なぜか購入価格の216,000円のままになっています。
これは購入時の価格(720円 × 300株)で計算された金額で、本来であれば793円(現在の株価) × 300株 = 237,900円となっているべきです。
このことから、この画像は実際の取引アプリの画面ではなく、捏造された可能性が高いと判断できます。
LINEコミュニティ内では、取引画面のキャプチャだけでなく、「ヘッジファンド口座」への入金を証明する振込明細書や振込完了画面の画像も頻繁に投稿されます。
しかし、これらの画像には共通して、振込金額だけが分かるようにその他の情報に見事なまでのモザイク処理が施されています。
しかも、高齢者と思われる投稿者も含まれているのに、全員が揃って、過不足のない完璧なモザイク加工をしているのです。
これは明らかに不自然で、画像があらかじめ用意され加工されたものである可能性が高いと考えられます。
Outrider Glenview Macro Fundとは
LINEグループに参加していると、定期的に「アシスタント」を名乗る女性から、「ファンド口座」への参加をすすめるメッセージが届きます。
申込みの際には、Googleフォームを使って氏名や連絡先などの個人情報を入力させられます。
しかし、本物のヘッジファンド企業が、Googleフォームのような無料ツールを使って個人情報を集めることは極めて不自然です。

フォーム内の説明文には、以下のような表記があります。
Glenview Capital Managementは2000年に設立され、ニューヨークに本社を置く世界有数のヘッジファンドの一つです。現在の運用資産高は約77億ドルに達しています。当社は安定的かつ専門的な資産運用サービスの提供を目指し、2026年までに個人投資家向けサービスの拡大を計画しています。すでにオーストラリア市場での展開に成功しており、日本市場を次なる重要市場として位置付けています。
なお、今回の日本市場向けプロモーションは、当社の子会社である「Outrider Glenview Macro Fund」との共同企画として実施しています。
引用元:申し込みGoogleフォームより
Glenview Capital Management本社について
フォームに記載されている「Glenview Capital Management」は、ニューヨークに本社を置く実在する資産運用会社ですが、フォーム内の説明には間違いがあります。
Wikipediaを確認してみると、「Glenview Capital Management」の設立は、2000年ではなく2019年です。
参照元:https://en.wikipedia.org/wiki/Glenview_Capital_Management
また、2019年時点の資産高が約7.7億ドルで、2025年3月時点の資産は約40.7億ドルで、77億ドルではありません。
参照元:https://www.holdingschannel.com/aum/glenview-capital-management-llc-aum/
Googleフォームに書かれている情報が間違いであることから、このフォームが「Glenview Capital Management」を語る偽の組織によるものであることが、容易に想像できます。
子会社Outrider Glenview Macro Fundについて
本投資案件は、「Glenview Capital Management」の子会社を名乗る「Outrider Glenview Macro Fund」という法人によるものだとの記載があります。
しかしながら、いくら調べても「Outrider Glenview Macro Fund」が「Glenview Capital Management」の子会社であるという公式な情報は確認できません。
「Outrider Glenview Macro Fund」には、公式サイト(https://outriderglenviewmacro.com/)が存在しています。

引用元:https://outriderglenviewmacro.com/
以下、2025年7月8日時点の、公式サイトサーバー・ドメイン情報です。
ドメイン | outriderglenviewmacro.com |
サーバーIP | 2606:4700:3030::6815:1001, 104.21.96.1 |
ISP | Cloudflare Inc |
ドメイン取得日 | 2025年5月7日 |
ドメインレジストラ | Dynadot Inc |
このドメインが取得されたのは、わずか2ヶ月前のことです。
ドメイン登録者の情報も非公開とされており、透明性に欠けます。
つまり、公式サイト自体が立ち上がってからまだ2ヶ月ほどしか経っていないことになります。
それにもかかわらず、「すでにオーストラリア市場での展開に成功している」との説明がフォームに記載されています。
サイトも存在しない段階で投資勧誘を行っていたとは考えにくく、サイト公開後のたった2ヶ月でオーストラリア市場を開拓するというのも非現実的です。
このような状況から考えると、この公式サイトはユーザーの信頼を得るために急ごしらえで作られた“見せかけの存在”である可能性が極めて高いと言えます。
Outrider Glenview Macro Fundのライセンスの信憑性について
Outrider Glenview公式サイトの下部には、以下のような記述があります。
登録情報: AFS representative number: 001314227 / Australian financial services authorised representatives
所属団体: Financial Services Council Member / Australian Investment Council Member引用元:https://outriderglenviewmacro.com/

引用元:https://outriderglenviewmacro.com/
こちらは
・AFSのライセンスを取得しており、ライセンス番号は「001314227」
・FSCおよびAICに所属している
といった内容です。
AFS representative number: 001314227
この番号は、オーストラリアの金融サービス法(AFSL: Australian Financial Services Licence)に基づいて登録された「認定代表者(Authorised Representative)」の個別識別番号です。
AFSライセンスについては、ASIC(Australian Securities and Investments Commission)公式サイトにて、ライセンス登録業者を確認することが可能です。
ライセンス番号「001314227」を検索してみると、ライセンス登録を確認することが出来ました。

参照元:https://service.asic.gov.au/
上記情報によると、現在のステータスは「CEASED(登録終了)」となっています。
つまり、OUTRIDER GLENVIEW MACRO FUND PTY LTDは、過去にライセンスを所有していたが、現在は登録が削除されライセンスを所有していないことを意味します。
しかも登録期間は、2025年3月16日〜2025年4月6日までの2ヶ月半と異常に短い期間です。
さらに、ASIC登録では通常、所在地の記載がありますが、住所不明のまま登録されていたことが分かります。
OUTRIDER GLENVIEW MACRO FUND PTY LTD は、現在ASICの認定を受けていない企業であり、過去にごく短期間だけ登録があったにすぎません。
その活動期間や所在地不明という情報から見ても、信頼性は極めて低く、関わるべきではない会社と考えられます。
Financial Services Council Member / Australian Investment Council Memberについて
OUTRIDER GLENVIEW MACRO FUND PTY LTD は、2つの業界団体メンバーであると主張しています。
Financial Services Council(FSC) は、オーストラリアの金融サービス業界を代表する業界団体です。
公式サイトに正会員リストがありますが、この中に 「OUTRIDER GLENVIEW MACRO FUND PTY LTD」の名前を確認することはできません。
参照元:https://fsc.org.au/about/fsc-members
Australian Investment Council (AIC)は、プライベート・キャピタル(プライベート・エクイティやベンチャーキャピタル業界)の業界団体です 。
公式サイト上に 「Our Members」 ページがありますが、こちらのページでも「OUTRIDER GLENVIEW MACRO FUND PTY LTD」の名前を確認することは出来ません。
参照元:https://investmentcouncil.com.au/site/site/about/our-members.aspx
ヘッジファンド口座に参加しても利益を得ることは出来ない
LINEグループ内で発言しているアカウントの多くは、いわゆるサクラ垢と考えて間違いないでしょう。
少しでも矛盾点を指摘したり、運営に対して疑問を投げかけると、即座に退会させられるようになっており、実際に管理人自身も矛盾を指摘した途端、強制的に排除されました。
おそらく運営側は、複数のLINEグループを用意し、大量のサクラアカウントを配置してそこにターゲットとなるユーザーを少数誘導しているのではないでしょうか。
あたかも多くの参加者が実際に利益を得ているかのように見せかけ、信用できる投資ファンドであるかのように演出しているものと考えられます。
グループ内の発言を鵜呑みにしてしまったユーザーが、偽りの投資ファンドに現金を入金し、運用画面上で「利益が増えている」ように見えても、それはあくまで見せかけに過ぎません。
場合によっては、最初のうちは少額の出金が可能なこともありえます。
これは「本当に稼げる」と思わせ、より高額な入金を誘導するための典型的な手口です。
ですが、ある程度の金額を入金した段階で突然出金ができなくなり、LINEグループが消滅し、連絡を取れなくなる可能性が高く、極めて危険な仕組みであることは明らかです。
手口が巧妙になっている
管理人は現在も複数のLINEオープンチャットやグループに参加し、日々その動向を監視しています。
そうした中で感じるのは、ここ最近、手口がかなり巧妙になってきているということです。
以前は、コミュニティやグループ内の発言に、中国語特有の漢字(簡体字)が頻繁に混じっていたり、日本語の使い方に違和感があったりと、不自然さが見受けられました。
しかし最近では、そうしたわかりやすい違和感がほとんど見られなくなっています。
サクラの投稿も、より自然な日本語になっています。
さらに、「有名投資会社と提携した」「大手証券と契約を結んだ」などと公言し、それらしい契約書や締結式のような写真を掲載するケースも見受けられます。
本案件でも、コミュニティ内で「ニュースになっていた」といった発言が見られましたが、その実態はYahoo!ニュースを装ったフェイクニュースページへの誘導でした。
信憑性が高い情報のように見せかけ、ユーザーの警戒心を解くための演出です。
彼らの狙いは、まるで実在する信頼性の高い投資コミュニティであるかのように振る舞いながら、段階的に信頼を築き、最終的に資金の入金へと誘導することにあります。
こうしたLINEのオープンチャットやグループに参加していると、発言の雰囲気やそれらしい情報に惑わされがちですが、常に「これは本当に正しい情報か?」という視点を持ち、冷静に判断することが極めて重要です。
そもそも、真っ当な投資ファンドがLINEで集客・運用の説明を行うこと自体が、通常では考えられないことです。
投資を勧誘するLINEグループやオープンチャットに参加してはいけない

LINEのグループやオープンチャットを利用した投資勧誘は、巧妙に信頼を演出しながら、最終的には資金を引き出すことを目的としているケースがほとんどです。
見せかけの利益やフェイクニュース、サクラによる投稿などで「本当に儲かっている」と錯覚させ、徐々に深みに引き込んでいきます。
本来、信頼できる投資ファンドが匿名性の高い場で勧誘を行うことなどあり得ません。
LINE公式や警視庁など、各所でも注意喚起が行われています。
著名人や本物の著名投資家や経済評論家が、LINEグループやオープンチャットという不特定多数が集まる匿名性の高い場で、投資のアドバイスを行うことはまずありません。
甘い話の裏には必ずリスクが潜んでいます。大切な資産や個人情報を守るためにも、安易にこうしたコミュニティに参加するのは絶対に避けてください。