本日は、海外取引所「FirstECN」について検証していきます。
フェイクニュースページで、芸能人や著名人の画像を使って、ユーザーを誘導している海外取引所ですが、著名人の写真を見て信用した方が口座開設を行っている事例が発生しています。
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著名人の名前や写真を勝手に利用している広告やフェイクニュースに、要注意!
著名人のスキャンダル記事でフェイクニュースサイトへ誘導
当ブログでも、数回にわたり著名人の名前や写真を使用し、偽のサイトへ誘導する事案を取り上げてきました。
今回取り上げる「FirstECN」も、ネット上で見かけた「著名人のスキャンダル」といったフェイク広告から、フェイクニュースサイト(投資を促す偽記事)へ誘導され、最終的に「FirstECN」へと繋がります。
残念ながら、ネット上には悪質広告があふれており、YouTubeやSNSなどあらゆる場所で目にする機会が増えています。
今後はAI技術の発展により、ディープフェイクを活用したより巧妙な手口が横行することが予想されます。
怪しいものに惑わされないためにも、ひとつの情報を無条件に信用せず、主要メディアや公式サイト、複数の信頼できる情報源で事実を確認する習慣を身につけましょう。
冷静な判断があなたの大切な資産や個人情報を守る鍵となります。
セキュリティベンダーによる安全性チェック
複数のセキュリティサービスで、一括スキャンが出来る「VIRUSTOTAL」にて、「FirstECN」の安全性をチェックしてみました。
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参照元:https://www.virustotal.com/
100点中11ポイントと低評価の判定です。
ノートンやトレンドマイクロの安全性チェックでも「危険」という判定になります。
FirstECNは日本人をターゲットとしている可能性大
調査を進めると、「FirstECN」が日本人をターゲットとするプラットフォームである可能性が出てきました。
サーバー・ドメイン情報
以下は、2025年2月11日時点のサーバー・ドメイン情報です。
ドメイン | firstecn.com |
サーバーIP | Main IP:172.67.215.157 |
ISP | Cloudflare Inc |
SSL証明書の種類 | Google Trust Services |
サイトへのアクセス状況を確認すると、なんと100%日本からのアクセスとなっています。
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多言語対応は見せかけ
「FirstECN」は、日本語の他に英語、ヒンズー語、ポルトガル語の多言語対応となっています。
firstecn.comにアクセスすると、自動的にfirstecn.com/ja/へ転送され、日本語版ページが表示されます。
多言語対応のWebサイトでは、ユーザーのアクセス元である国や、ブラウザの言語設定をもとに、自動的にそのユーザーに最適な言語のページに転送することがよく行われます。
例えば、インドから「FirstECN」にアクセスすると、ヒンズー語のサイトを表示するといった仕組みを実装するのが一般的です。
そこで、VPNサービスを利用して、インドと、ブラジルのIPアドレスを通して「FirstECN」へアクセスしてみました。
するとどうでしょう、それぞれヒンズー語、ポルトガル語のサイトへ転送されるはずが、何度やっても日本語版サイトへ転送されます。
これは、「FirstECN」が、明らかに日本人をターゲットとしていることを意味します。
FirstECNには、類似サイトが存在する
以下は、「FirstECN」のトップページキャプチャです。
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引用元:https://www.firstecn.com/ja/
CFD取引を大々的にうたっていますが、メインビジュアル下に表示されているティッカーは、仮想通貨の価格です。
CFDであれば、FX、株、インデックス等、様々な情報があるべきですが、なぜかサイト内に表示されるのは「仮想通貨」の価格のみです。
さらに、このトップページ、どこか見覚えがあるように感じました。
昨年の夏頃、同様のフェイクニュースで誘導された「CapPlace」というサイトがあるのですが、そのデザインや構成が「FirstECN」と非常によく似ているのです。
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引用元:https://www.capplace.com/
いかがでしょうか?
トップページだけでなく、サブページもレイアウトや文章がそっくりです。
このサイトも、「FirstECN」と同様にフェイクニュースでユーザーを誘導しています。
おそらく同じようなサイトが他にも存在しているのではないかと考えられます。
HTMLソースを見ても共通する部分ばかりなので、両サイトは関係する組織よって運営されている可能性が高いと言えるでしょう。
運営会社Nakito SAについて
「FirstECN」サイトには、「Nakito SA」という組織によって運営されているとする記述があります。
本ウェブサイトhttps://www.firstecn.com はNakito SAによって所有および運営されています。
Nakito SAは正式にコモロ連合で登録番号HT00324015で登録され、MISA (MWALI国際サービス機関)によりブローカーライセンス番号BFX2024050で規制され、登記事務所の住所はBonovo Road, Fomboni, Comoros, KMです。
引用元:https://www.firstecn.com/ja/
海外ブローカーであるため、日本のライセンスを持っていないのは珍しくありません。
しかし、オフショア法人が取得している知名度の低い海外ライセンスは、信頼性が高いとは言えません。
所在地は、おそらくオフショア会社の架空住所
「Nakito SA」の住所、Bonovo Road, Fomboni, Comoros, KMですが、これは、数多くの海外ブローカーに所在地として利用されている住所です。
財務省から警告を受けている、以下の業者も同じ住所を所在地としています。
・Tomorrow Technologies Ltd(Bigmarkets)
・Robertson Finance Inc.(CapPlace)
・DataWave Tech Ltd(Maunto)
その他にも「PROXTREND」「FXONET」といったブローカーが、同住所を所在地としています。
いずれも、ブログやSNSで注意喚起が行われている海外ブローカです。
この住所は、オフショア法人が登記用の住所として取得しているだけの可能性が高いです。
MISA(Mwali International Services Authority)とは
「Nakito SA」は、MISAのライセンスを取得していると主張しています。
確かに、MISAのサイトで「Nakito SA」を探すと、リストに名称を確認できます。
参照元:https://mwaliregistrar.com/list_of_entities/verify/408
では、MISA(Mwali International Services Authority)とは、一体どんな規制機関でしょうか。
MISAのあるMwaliは、コモロ連合に属する島の1つですが、コモロ連合における正当な金融規制機関は、La Banque Centrale des Comores(コモロ中央銀行)のみです。
島ごとに、公的な金融規制機関は存在しません。
MISAは一見すると、公的な規制当局であるような印象を受けますが、民間によって独自に設立された組織であると考えられます。
さらに、MISAについて、調査を進めると、サイバー金融犯罪に関する情報を提供するニュースサイト、FinTelegram Newsに「MISA」に関する記事がありました。
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記事によると、BehindMLMによる「MISA」の詳しい調査結果から、「MISAは偽の規制機関である」と断じています。
BehindMLMの調査によると、「MISA」のドメインは、ホスティングサービスGoDaddyで登録され、登録者情報を非公開にしており、民間 (政府機関ではない) によって登録されているとのこと。
また、同サイトの国別コードトップレベルドメインが、コモロの「.km」ではなく、「.com」ドメインであることにも触れています。
通常、公的な金融関連機関であれば、国別コードトップレベルドメインがサイトURLに含まれるはずです。
(例:コモロ中央銀行=https://banque-comores.km)
更に、BehindMLMの読者が、コモロ中央銀行に直接確認を行ったところ、以下のような回答を得たとのことです。
Mwali International Services Authority Register of Companies is a fictitious entity, without any real existence in the territory of the Union of the Comoros.
(It) has no legitimacy, no legal basis or authorization allowing it to issue licenses to companies operating in the banking sector and financial.
The Central Bank of Comoros is the one and only authority empowered to do so in the three islands (Anjouan, Moheli and Grande Comores).
引用元:https://behindmlm.com/companies/gspartners/gsb-gold-standard-banks-mwali-banking-license-is-a-sham/
要約すると、以下のような内容です。
「MISA」は、コモロ連合の領土内に実在しない架空の組織である。
金融関連事業を展開する企業にライセンスを発行する正当性や法的根拠はなく、権限もない。
コモロ中央銀行は、3つの島において、その権限を持つ唯一の機関です。
「MISA」は、政府機関の認可を得ていない、民間のライセンス発行組織ということです。
「MISA」は、ライセンス料を支払えば、簡単にライセンスを取得できる民間組織というだけの話で、法的な効力は保持していないということです。
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海外の金融ライセンスもピンキリだから、「ライセンスがあれば安全」とは限らないよ
2025/2/19追記
Mwali International Services Authority(M.I.S.A.)の調査結果をまとめました。

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FirstECNの口コミ・評判
ネット上での「FirstECN」に関する口コミや評判を調べてみました。
Yahoo!知恵袋には、以下のような相談が寄せられていました。
first ecnについて質問です。 コンタクトしてしまったのですが、海外からの電話に出てしまいました。スマホでいろいろ誘導され30000円送金しました。その後いろいろ質問され、面倒になり断りましたが受け付けてくれません。いま身分証明の段階でとまっています。どうすればよいか教えてください。
引用元:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12308923282
海外から電話がかかってくるとのことですが、公式サイトのサポートページに記された電話番号は、日本のIP電話番号です。

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引用元:https://www.firstecn.com/ja/support/
冒頭の81は、日本の国番号ですので、05050506047が問い合わせ先電話番号ということです。
ちなみに、この電話番号ですが、英語版、ヒンズー語版サイトでも、同じ電話番号が表示されます。


引用元:https://www.firstecn.com/en/support/ https://www.firstecn.com/hi/support/
このことからも、ターゲットが日本人であることが伺えます。
IP電話番号「05050506047」を調べると、以下のような口コミがありました。
片言の外国人応対で何言ってるかさっぱり分からない。
引用元:https://www.telnavi.jp/phone/05050506047
よく聞き取れないですと言ったら、
中国人ですか?と言ってくる始末。
↑だけははっきり聞こえる笑
結局、何言ってるか分からなかったので、電話切りますと伝えたら、バカヤローと言われ切られました笑
電話の相手は、片言の日本語を話す外国人だったとのことですから、海外組織が日本人をターゲットとしているのではないでしょうか。
FirstECNの総評
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
サイトへの誘導経路が、フェイクニュース記事という時点で、危険なサイトであることは明らかです。
類似サイトの存在、効力のない金融ライセンス、架空の住所など、NG要素しかありません。
このような金融プラットフォームを簡単に信用してはいけません。
投資をする際は、自分が投資するものについてしっかり学びましょう。
何も知らないまま大切なお金を預けるのは、非常にリスクが高い行為です。
知識を身につけることで、「これは怪しいかも?」と見抜く力も養われます。
以上「FirstECN」についてでした。